活動の概要
令和3年度日本造林協会活動の概要
1 総 括
令和3年度も2年度に引き続き新型コロナウィルス感染症拡大の影響を強く受けた一年でした。また、2月に始まったロシアのウクライナ侵攻とも相まって、世界経済が物価高や食料供給の不足等により大きな打撃を受けました。
我が国の林業・木材産業に関しては、アメリカ等の住宅需要の急激な拡大を背景に、輸入材の入荷が激減し、輸入材価格が高騰するといういわゆるウッドショックが起こりました。年度後半には若干価格面で落ち着いてきてはいるものの、コロナ禍以前と比べて高い状況が続いています。
このような中、2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」社会の実現を目指し様々な取組が進められており、森林・林業・木材産業分野でも積極的な貢献が求められています。このため、間伐や再造林等の森林整備やその基盤となる強靱な幹線林道等の路網整備等を着実に推進する必要があります。
一方で、各地で台風や集中豪雨による自然災害が頻発しており、安全で安心して暮らせる緑の国土基盤づくりを進めるためにも森林整備をしっかりと進めていく必要があります。
このため、森林整備事業予算の安定的な確保と関連施策の充実に加え、令和3年度からスタートした「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」等に基づき、森林整備に対する追加的な予算の確保を図ってまいりました。
なお、令和3年度については、日本造林協会の活動も大きく制約を受け、例年東京で開催している通常総会や森林整備事業研修会を書面やオンラインで開催することとなりました。また、日頃の情報収集活動等に関しても一定程度制約を受けることとなりました。
このような中、会員の皆様のご理解とご支援の下、都道府県や市町村等関係機関のご協力を得ながら、以下の取組を実施しました。
2 総会及び理事会の開催
新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から、総会については、令和3年7月に書面決議によ り開催しました。また、理事会については、令和3年11月25日に役員10名の出席のもと東京で 開催しました。
3 政策要請活動の展開
令和4年度予算編成に向けて、日本造林協会として関係行政機関等に対し、要請活動等を行いました。
具体的には、概算要求前及び概算決定前に林野庁、財務省等に対し次のとおり要請活動を行いました。
① 令和3年7月28日 森林・林業政策に関する提案(総会決議)に基づく要請活動
② 令和3年11月26日 森林・林業関係政策要望(参考)に基づく要請活動
また、「森林整備・治山事業促進議員連盟 緊急決起大会」等に参加し、他の林業関係団体と連携しながら、政府関係機関や関係議員に要請活動を行いました。
(参考)
1 林業の成長産業化に向けた財源の安定確保
林業の成長産業化に資する主伐後の再造林や間伐、路網整備等の森林整備事業予算の安定確保
2 森林の適正な経営管理への支援及び森林整備関連施策の拡充
1)主伐・再造林の一貫作業システムの推進やICT(情報通信技術)・ドローン等の活用によるスマート林業の推進
2)コンテナ苗等の優良種苗供給体制の整備やシカ等の森林病虫獣害対策等に係る支援の強化
3)下刈りや地拵え等の造林作業の安全・軽労化に向けた造林作業用機械の開発・導入に対する支援制度の拡充・強化
4)森林環境譲与税の活用も含めた山村・都市の連携施策の指導・推進
5)森林境界明確化・施業集約化への支援強化
6)複雑化した森林整備事業補助体系の見直し・簡素化
3 木材需要の拡大推進と安定的な国産材供給体制の確立
1)A材や大径材の利活用も含めた木材需要拡大の推進
2)ウッドショックを見据えた国産材の安定的な供給体制の確立
3)適切な森林整備が可能な木材需給バランスの確保
4 林業就業者の確保育成と労働安全対策の強化
1)地域の雇用の受け皿となる「緑の雇用」等の予算の拡充
2)林業の技能検定創設及び労働安全確保対策への支援・強化
3)都道府県林業労働力確保支援センターに対する支援の充実
5 国土強靭化等に向けた安全・安心な国土基盤の確立
1)集中豪雨等による被災森林の復旧・整備の推進と所有者負担の軽減
2)「防災・減災・国土強靭化のための5か年加速化対策」の着実な推進
3)「ふくしま森林再生事業」の予算確保及びしいたけ原木林の再生への継続的支援
4 林政懇談会の開催
令和3年11月25日に当協会役員、林野庁石田整備課長及び関係団体が参画した林政懇談会 を実施し、最近の森林・林業を取り巻く情勢について精力的な意見交換を行いました。
5 森林整備事業研修会の実施
令和3年10月26日・27日の2日間にわたり、オンラインによる森林整備事業研修会を開催し ました。全国の会員傘下の森林組合や市町村、民間の事業体等から総勢85名の方が参加しまし た。研修では、東京大学農学部の丹下健教授の特別講義を始め、8つの課題について講義が行 われました。
6 広報活動の実施
森林整備技術や森林・林業関連施策等の情報を会員等に伝達、普及するために次の活動を実施しました。
⑴ 造林時報の発刊
季刊誌造林時報(212号~215号)について毎号1,750部を発刊し、森林・林業関連施策や予算情報等の提供、森林整備技術の普及等に努めました。
⑵ ホームページによる情報提供
ホームページにより、関連予算、法案、施策の動向に関し、「会員の広場」等を通じてタイムリーに詳細情報の提供に努めました。
⑶ 造林ニュースレターの発行
毎月初めに、E-mailを通じて造林ニュースレターを会員に送付し、その時々のトピックについて情報の共有を図りました。
7 森林整備関連書籍の出版
森林整備事業担当者等の実務書籍として「造林関係法規集(令和3年度追補版)」を1,300部、「民有林森林整備施策のあらまし(令和3年度版)」を850部発刊しました。
8 補助事業等の受託
⑴ 森林林業振興助成事業
一般財団法人日本森林林業振興会が実施している令和3年度の「森林林業振興助成事業」に当協会が提案した事業が採択され、事業を実行しました。
事業名は「ドローンを活用した大苗造林による作業の低コスト化・省力化」と題し、全国素材生産業協同組合連合会と協力して実証調査を行いました。
⑵ 「新しい林業」経営モデル実証事業
林野庁の補助事業「「新しい林業」経営モデル実証事業」の実施主体である一般社団法人林業機械化協会から部分的に事業を受託し、実証事業実施機関等に対して技術的助言等を行いました。